2021/04/17

シュトラウス 「影のない女」 ベーム 1955

今夜はリヒャルト・シュトラウスの「影のない女」全曲を聞きました。カール・ベーム指揮ウィーンフィルハーモニーによる演奏、1955年の収録(Documents盤)です。

「アリアドネ」と同様に、ベームの録音を挙げてみます。

1955年11月9日 ライヴ録音 Orfeo盤
1955年11月-12月 スタジオ録音 DECCA盤(Documents盤)
1974年8月16日 ザルツブルク ライヴ録音 Opera D'oro盤
1977年10月 ライヴ録音 DG盤

残念ながら映像は遺されていないようですが、このシュトラウスの「オペラ前中期の最高傑作」にこれだけの録音があるだけでも感謝すべきでしょう。

今回鑑賞したDocuments盤(DECCA原盤)は唯一のスタジオ録音となりますが、録音史上一大イヴェントであったと思われます。それ故か、2011年ザルツブルクでのクリストフ・ロイによる演出は、1955年のレコーディング風景に置き換えるというものとなっています。

なお、このセッション録音については逸話があります。ベームが録音したい熱意に対してDECCAが渋ったために、ベームは報酬を辞退するだけでなく、一発録りという条件でDECCAの首を縦に振らせたそうです。(おかげで、このような記録を世に残してくれました!)

さて、シュトラウスのオペラでは「アラベラ」がとても好きですが、最高傑作となれば、やはり「影のない女」、「ダナエの愛」、あるいは「カプリッチョ」となるでしょう。そして、この作曲家特有の「森羅万象、何でも『音』にすることができる」という鬱陶しさ(?!)を端正な美に昇華できるのは、やはりベームが第一人者となるでしょう。

もちろん、ベームのシュトラウスの魅力は、歌手陣の素晴らしさにあることはもう言うまでもないでしょう。
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2021/03/18

シュトラウス 「ナクソス島のアリアドネ」 ベーム 1954

今夜はリヒャルト・シュトラウスの「ナクソス島のアリアドネ」全曲を聞きました。カール・ベーム指揮ウィーンフィルハーモニーによる演奏、1954年8月、ザルツブルクでの実況録音(Documents盤)です。

ベームが得意とした「アリアドネ」はこの他に、下記の録音が遺されています。

1944年6月 ウィーン国立歌劇場(シュトラウス生誕80年記念公演)
1965年8月21日 映像 ザルツブルク音楽祭(ウィーンフィルハーモニー)
1969年9月20-28日 スタジオ録音(バイエルン放送交響楽団)
1976年11月20日 ウィーン国立歌劇場
1978年 映像 ウィーンフィルハーモニー

これらすべてを聞いたわけではありませんが、ベームの特徴はなんと言っても歌手陣!これほどの歌手を揃えているとなると、ショルティのスタジオ録音くらいのものではないでしょうか。

また、ベームの端正な指揮ぶりも魅力的です。たとえば、ジェームズ・レヴァインもこの作品を贔屓にしているのか、これまで商用に3回収録しています(1986年、1988年、2003年)。レヴァインの指揮も魅力的ではありますが、頻繁には手が伸びません。レヴァインの色彩感が華美であることがその理由と思われます。

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2021/02/15

シュトラウス 「ばらの騎士」 ベーム 1958

今夜はリヒャルト・シュトラウスの「ばらの騎士」全曲を聞きました。カール・ベーム指揮シュターツカペレ・ドレスデンによる演奏、1958年の録音(Documents盤)です。

私はあまりに「ばらの騎士」を苦手としています。往年のシュトラウス指揮者で言えば、カラヤンの妖艶さよりも、ショルティの単刀直入さ、そしてベームの質実剛健さを好みます。

ベームはライヴ録音とスタジオ録音で趣がだいぶ異なる指揮者ですが、第3幕など、ライヴのような推進力をともなった演奏を聞くことができます。

この時代の歌手、声の色そのもので魅力ある歌手が多かったと思います。この録音では、オックス男爵のクルト・ベーメ、オクタヴィアンのイルムガルト・ゼーフリート、そしてファーニナルのディースカウ!(ディースカウは何をやってもディースカウ、驚異的に巧いにもかかわらず、諸刃の剣となってしまうことがありますが、ファーニナルの場合は性格的な役になっても良いでしょう。)

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2021/01/20

リヒャルト・シュトラウスのオペラ

今年最初のエントリーは、オペラ鑑賞の覚書ではなく雑感を記します。


Richard Georg Strauss、1864年6月11日 - 1949年9月8日(85歳没)

シュトラウスは15のオペラを遺しています。オペラ作曲家として成功を収めた作品は1905年、3作目の「サロメ」でしょう。

その後、およそ10年の間に「エレクトラ」、「ばらの騎士」、「ナクソス島のアリアドネ」を発表し、その名声を確固たるものとします。

戦後から今日にかけて、ベーム、サヴァリッシュ、ショルティ、そしてティーレマン等の活躍により「影のない女」という大傑作が世に広まるようになりました。「影のない女」は、「アリアドネ」の次に作曲されたオペラです。

ところが、それ以降の作品、つまり、1920年代以降の作品となると、まだまだ人気が今一つのような気がします。つまり、シュトラウスのオペラは、前半に人気が集中しているようです。

後半には、1930年代の「アラベラ」や「ダフネ」、そして1940年代の「ダナエの愛」と「カプリッチョ」という名作があります。

「サロメ」ならば「ダフネ」、「エレクトラ」ならば「ダナエの愛」、「ばらの騎士」ならば「アラベラ」、「アリアドネ」ならば「カプリッチョ」と、シュトラウスは前半作品をさらに卓越した筆致で後半の作品を書いていると思えるのです。

もちろん、シュトラウス・ファンからしてみれば、前半だけでなく後半のオペラをそれぞれ均等に愛していらっしゃることでしょう。

しかし、そのシュトラウス・ファンでも、前半に人気作(よく舞台にかかる作品)が集中していることは否定できないのではないでしょうか。録音、映像のリリースも数が限られていますから。

こういったシュトラウスの受容はなぜ起きるのでしょうか。ベーム、サヴァリッシュ、ショルティといった名匠が後半作品も積極的に紹介したこととは思いますが、聞き手が追いつかなかったように見受けられます。

やはり、後半作品は舞台にかけにくいといったことではなく、マーケットが前半作品を欲しているのではないでしょうか。つまり、作品の性格ゆえのこととなるのでしょう。

たとえば、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲ならば最晩年の後期作品よりもラズモフスキーといった中期作品に人気があることと同じと思えるのです。ベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲は、人類に与えられた至宝ですが、その魅力に開眼するまでは晦渋きわまりないことは否めません。

これと同じことなのだと思います。

逆を言えば、後期の魅力に開眼すれば、(初期中期の魅力を認めつつも)後期に惹かれることが多いのではないでしょうか。

今年度はじめのオペラ鑑賞、この流れでいけば、シュトラウスのオペラ鑑賞、それも中後期となるのでしょうが、今年はあえて初期中期をいくつか聞いていこうと思います。
2020/12/19

シュトラウス 「カプリッチョ」 ベーム 1960

今夜はリヒャルト・シュトラウスの「カプリッチョ」全曲を聞きました。カール・ベーム指揮ウィーン国立歌劇場による演奏、1960年5月15日の実況録音(Documents盤)です。

1960年の収録とはいえ、実況録音ゆえでしょうか、音質は良くありません。それでも、聞き進めていくと、音質が気にならなくなります。素晴らしい歌手陣を擁しており、マイクが声を巧く捉えているからでしょう。

ことに、男声低音にウーデ(伯爵)、ベリー(詩人)、シェフラー(劇場支配人)が揃った豪華さは他に望めないでしょう。(ベームのDG盤は順にDFD、プライ、リーダーブッシュ。サヴァリッシュのEMI盤はヴェヒター、DFD、ホッター。もちろん、DG盤もEMI盤も素晴らしいですが、「カプリッチョ」を聞く上で、どうしてもDFDは肩を張りすぎている気がします。)

ケートとザンピエーリもイタリア歌手を好演しています。ことにケートは脇役としてさまざまな録音が遺されていることに感謝します。

「カプリッチョ」といえば伯爵令嬢が最も重要な役となりますが、シュヴァルツコップは素晴らしいですね。シュヴァルツコップといえば、私と相性が非常に悪く、この大歌手ゆえに最後まで聞き通すことができない録音が山ほどあります。凝りに凝った歌唱に鬱陶しくなってしまうことがその理由と思われますが、この実演ではストレートフォーワードな発声であり、貫禄十分ではないでしょうか。


さて、今年は大変な年でした。本当に大変な年でした。それでも、少なくとも今は心穏やかに「カプリッチョ」を聞いて今年の鑑賞覚書を終えることができることを良しとします。

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